夜の窓


飛行機に乗っていたときのことです。
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ふと見ると、白い月が光っています。
それはあたかも雲海にひっそりと
置いてあるように見えました。
白く光る月と雲の接するところは
わずかに光って、
まるで影を落としているようでした。
月の影は光でできているのかもしれません。
そのうち、実にゆっくりと月は雲から
垂直に離れ始めました。
そしてまだ雲に近いところに浮いて
静かな影を落としていました。
雲は月を捕らえようとしているのか、
それとも
ただ月にもっと触れていたいのか、
時折、煙のように舞い上がり、
月の皮膚を撫でるのでした。
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どれくらい見ていたでしょうか。
その内に飛行機が降下を始めたので、
月は雲の中に見え隠れしながら
いずれ、暗い夜の闇につつまれて
すっかり見えなくなりました。
飛行機が空港に降り立つと、そこは静かな雨の夜でした。